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教材開発秘話

オリジナル教材を作ろうと思った理由 / Interview-オリジナル教材開発秘話-

山本 :「オーシャンさんは、従来名古屋を中心に、愛知・岐阜・三重県内の学校、幼稚園、学習塾等へ外国人講師を派遣されると共に、自社でも直営の英会話教室を運営されており、幼児・児童英語では地元で大変評判が良いわけですが、そもそもオリジナル教材をどうして制作しようと思われたのですか?」

本多 :「今から十数年前までは、私たちは外国人講師の派遣のみを行っていました。その当時も、フォニックス教材については自社教材がありましたが、主教材としては、O出版とかL出版といった大手洋書出版の幼児・児童向け英語教材を使用していました。私たちはそうした洋書教材に独自のカリキュラムを組み合わせ、日本の子どもたちが楽しく英語を身につけられるよう、外国人講師の研修を徹底して行っていました。当時、お客様からレッスンに対する不満は一切出ておりませんでしたが、正直私自身は、学習歴3年目、4年目以降の生徒に対して、私たちが想定する成果がなかなか出ないジレンマを抱いていました。」

山本 :「オーシャンの外国人講師は質が良いとの評判ですが、それでも成果が上がらないことがあるのですか?」

本多 :「そうなんです。普通、幼児や小学生自身に英語に対する明確な学習動機はありません。多くの場合、保護者が我が子の将来を考えて、「将来英語が話せた方がいいだろう」というお気持ちからお子さんを幼少期から英会話教室に通わせています。そして、子どもも英語のレッスンが楽しければ続けます。ですから、以前の私たちも一般的な英会話教室のように、レッスンの中に様々なゲームやアクティビティを取入れてレッスンを構成していました。」

山本 :「ええ、普通よくある形態ですよね。
そのどこが問題だったのですか?」

本多 :「幼児~小学生の場合、最初の2年間くらい、いわゆる「英語学習の初歩の初歩」の段階は、英語レッスンの他にビンゴやカルタ取り(その他にもいろいろありますが)といったゲームやアクティビティで保護者からも子どもからも不満は出ません。レッスン内容も簡単ですし、ゲームなどもまだ新鮮で楽しいからです。しかし、3年目以降になると、レッスンの内容も徐々に高度になっていきますし、ゲームも無尽蔵にあるわけではないので、だんだん子ども自身がゲームやアクティビティに飽きてくるのです。具体的に言えば、「3単現の”s”」と「過去形」の区別を学ぶような段階になってくると、外国人講師側も生徒側も壁にぶつかります。」

山本 :「確かに。ぼくも中学生の頃、そのあたりで苦労した覚えがあります。やはり、外国人の先生が日本の小学生にそのあたりの内容を英語で理解させるのは難しいんですね。」

本多 :「その通りです。私たちが当時採用していた洋書教材は、今でも日本で最も多く使われている教材です。洋書の生徒用教材は、絵は豊富ですが、英語は必要最低限しか載っていません。まして日本語は一切載っていません。こうした洋書教材には別売で外国人講師用マニュアル(英語版)があり、そこには、「日本の子どもたちにどうやって英語で英語を導入するのか」について、いろいろなアイデアが載っています。その方法論自体にも問題はあるのですが、それ以上に問題だったのは、外国人講師の勤勉度の差異です。マニュアルを事前にしっかり読み込んで、マニュアル通りにレッスンを行う真面目な講師もいれば、マニュアルには一切目を通さず自己流でレッスンを行う講師もいるのです。つまり、指導マニュアルを必要とする教材を使っている限り、いくら研修を行っても、外国人講師のレッスンを均質化させるのは非常に困難です。」

山本 :「なるほど。オーシャンさんのようにたくさんの外国人講師をかかえていると、クライアントの教室に派遣する際に、外国人講師のパフォーマンスを均質化するのは大変なんでしょうね。」

本多 :「これは弊社に限ったことではありません。外国人講師を採用しておられる英会話教室や学習塾であればどこでも経験されることだと思います。外国人講師に頼る部分が大きければ大きいほど、「当たり外れ」が起きてしまいます。現に弊社のクライアントの中にも、自社で外国人講師を複数雇用して運営していたけれども、問題続きのため直接雇用を断念して、弊社の派遣講師(教材・カリキュラム込み)に切り替えられたというお客様が複数ございます。」

山本 :「そうですか。外国の方ですとそもそも日本人とは文化や考え方も違いますもんね。」

本多 :「勿論、文化や考え方の違いはあります。最初はどなたも戸惑われると思います。しかし、弊社のように長年に渡って相当数の外国人講師を雇用している会社としては、その部分は、慣れと言いますか、それなりにノウハウがありますから、それ程大きな問題ではありません。それよりも先ほどお話ししましたように、外国人講師のレッスンの均質化が最大の問題でした。」

山本 :「そこで、オリジナル教材をつくろうと
決心されたわけですね。」

本多 :「その通りです。当時私たちは「英語と日本語は言語的に相当違いがあり、距離の遠い言語である。通常週に1回という限られた時間内で、どうしたら学習動機の希薄な日本の幼児・小学生にしっかりした英語力を身につけさせることができるか?」を再度真剣に考えました。そして次のような結論に達したのです。
  • たとえ毎週外国人講師から英語を習ったとしても、週に1回という限られた時間内では「英語が自然に身につく」ことはありえない。
  • 英語はあくまで「学習の成果」として身につく。
  • 英語学習に王道はなく、英語を身につけるためには
    「たくさん聞いて、たくさん話す」しかない。
  • 外国人の良さを最大限に活かしながら、「たくさん聞
    いて、たくさん話す」ことのできる教材が
    必要不可欠である。
  • 外国人講師用マニュアルの不要な教材をつくる
    必要がある。

山本 :「なるほど。多くの英会話教室が、外国人の先生から習えば、いかにも英語が自然に身につくような宣伝文句を使っていますね。やっぱり幻想ですよね。それに、大人のフリー・カンバセーションと違って、相手が幼児・小学生となると、外国人の先生は、決められたカリキュラムや教材に従ってレッスンを行うことになりますから、教材そのものが重要ということですね。」

「よく身についているクラス」と「そうでないクラス」の担当外国人講師の違い / Interview-オリジナル教材開発秘話-

本多 :「そうです。ある時期私たちは、「よく身についているクラス」と「そうでないクラス」の担当外国人講師の違いは何だろうと、その理由をあらゆる角度から検証しました。」

山本 :「それは興味深いですね。それで原因は判明したのですか?」

本多 :「勿論、外国人講師のキャラクターの違いや、生徒自身の学ぶ姿勢の違いはあります。しかし、明るくて元気がよくて生徒から好かれている講師のクラスでも、我々の求める定着度に達していないクラスがありました。そこで、ある時私たちは外国人講師のレッスン内で、「子どもたちの発話回数」をバードウォッチングのカウンターで数えてみたのです。」

山本 :「子どもたちの発話回数をバードウォッチングの
カウンターで数えた?それで結果は?」

本多 :「本当に明確に出ました。1時間のレッスン(通常50分)で、子どもたちの発話回数は講師によって、「100回くらい~300回くらい」まで見事に差が出たのです。そして当然、「発話回数の多いクラスの定着度が明らかに良い」という結果と結びついたのです。私たちは確信するとともに決心しました。「発話回数を増やせる教材をつくり、外国人講師に対して改めて発話回数を増やすトレーニングをしよう」と。

山本 :「なるほど。説得力がありますね。ところで、100回とか300回と言われてもピンとこないのですが、一般的な英会話教室での子どもたちの発話回数はどれくらいですか?」

本多 :「弊社に求人で訪れる、他の英会話教室で指導経験のある外国人講師に、デモレッスンをさせてみますと、だいたい70回~100回程度です。これくらいの発話回数ですと、クラス内に何も英語が発話されていない空間(沈黙の時間)があったり、生徒が何も発話せず黙々と作業していたり、何かを書いていたりするようなレッスンです。仮に外国人講師の方は英語をしゃべっていても、生徒はあまり発話していないということですね。」

山本 :「そんなものですか。」

本多 :「まさか、保護者がカウンターを持って、お子さんのクラスの発話回数を計測することはできないと思いますが、実際のところ多くの教室はそんなものです。そこで、私たちは、「マニュアルに頼ることなく、テキストそのもので子どもたちの発話回数を引き出す教材」の制作に取りかかるとともに、外国人講師に対しては「1回のレッスンで生徒たちに最低300回発話させる」というトレーニングを行っていったのです。」

山本 :「私もオーシャンさんのレッスンを見て、最初は正直ビックリしました。本当にテンポが良くて、外国人の先生も子どもたちも実にたくさん英語をしゃべっていますよね。その理由がようやく分かりました。」

本多 :「おかげさまで、弊社は幼児用主教材として「Moja-kunシリーズ(全3冊)」、小学生用主教材として「Talk Timeシリーズ(全6冊)」を完成し、年少から小学6年生まで、最長で9年間、一貫したカリキュラムをご提供できています。そして、外国人講師も長期在籍者が多く(35名中7割が5年以上在籍)、生徒の発話回数も、最低目標の300回にとどまることなく、500回を超えるクラスが多く存在します。」

根本的な克服課題 / Interview-オリジナル教材開発秘話-

山本 :「1回のレッスンでの発話回数が100回か500回かの違いは大きいですね。それが3年も4年も経ったら当然生徒さんの定着度に大きな差が出ますね。」

本多 :「その通りです。根本的な克服課題が見え、そして教材を完成させ、それに基づいて講師研修ができるようになったことで、生徒の定着度は飛躍的に向上しました。簡潔に言いますとオーシャンの教材の特徴は次の3点になります。
1.外国人講師にとって指導しやすい。
2.日本人の子どもたちにとって学びやすい。
3.保護者にとって履修内容が一目瞭然。」

山本 :「保護者は子どもが何を習っているのか気になり
ますよね。」

本多 :「私たちも、以前洋書教材を使用していた頃は、生徒用教材だけでは履修内容が分からないので、保護者向けに毎月クラスレポートをつくっていました。それでもお子さんが履修内容をどの程度身につけているかは保護者に伝わりません。」

山本 :「そうですね。保護者の立場で考えれば、履修内容を知りたいのは勿論、我が子がその内容をどの程度身につけているかの方をもっと知りたいですよね。」

本多 :「オリジナル教材になってから、履修内容についてはテキストを開いていただければ全て分かっていただけるようになりました。そこで、あとは保護者に定着度合をいかに知っていただくかの工夫をしました。それは次のような仕掛けです。

  • 主教材の付属CDに工夫を施す。
    ・幼児教材「Moja-kunシリーズ(全3冊)」の付属CDには各レッスンの最終トラックに、音声だけの「英語クイズ」が入っています。保護者には、毎月末にご家庭でそのトラックをお子さんに聞かせ答えられるかを遊び感覚でやっていただいています。時に、保護者の方が聞き取れないのに子どもが答えるといった、ちょっとショックでうれしい現象も起きるようです。
    ・小学生教材「Talk Timeシリーズ(全6冊)」では、習ったレッスンのCDトラックを家で聞いてくる宿題を毎回出しています。その際、CDからは先ず日本語訳が流れ、正解の英文が出てくるまでの間(ポーズ)に、子どもが英語を言う構成になっています。ご家庭で親子で取り組んでいただきますと、お子さんが英語を言えるかどうかが分かります。家でもCDを聞く習慣を身につけた子どもたちは本当によく英語が定着します。

2.「スラスラチャレンジ」
小学生教材「Talk Timeシリーズ(全6冊)」には、履修した英文をランダムに12文ずつ集めた「スラスラチャレンジ」があります。12の英文を日本語訳だけを見て1分以内に正確に言うことができれば合格といったチャレンジです。これは子どもの自由意思で受けに来ます。合格すればいっぱい褒めて多少のご褒美をあげています。今では本当にたくさんの子どもたちがチャレンジしてくれています。たいていスラチャレを受ける前日に、家でお母さんにお願いして1分計ってもらい、予行練習をしているようです。その過程で保護者にはお子さんの定着度を実感していただけます。これはとても好評です。

3.「到達度テスト」の実施
毎年、年度末に当該履修教材の定着度を測る「到達度テスト」を実施し、保護者にその結果をご報告しています。

今後の展望 / Interview-オリジナル教材開発秘話-

山本 :「本多代表が今まで、いかに日本の子どもたちに英語を定着させられるかを、実に真面目に熱心に取り組んでこられたかがよく分かりました。最後に今後の展望についてお聞かせください。」

本多 :「2013年10月に文科省は、東京オリンピックイヤーに合わせ2020年に「小学校英語教科化(小5・小6:週に3時間)」を決定しました。これは私たちの予想より2年も早い実現となります。グローバル化や、中国・韓国の英語教育に差を広げられる一方であるという現実を受けた施策です。
日本の公教育における英語改革にはまだまだ10年~20年という長い年月が必要でしょう。
おそらくそれ程遠くない将来、大学入試の英語試験の在り方も大きく様変わりするでしょう。
上智大学の吉田研作先生が中心となって開発された「TEAP」は今後望ましい大学入試英語試験のひとつのモデルケースと言えます。「TEAP」は私立大学を中心に今後ますます採択校の広がりを見せることでしょう。

私個人的には、日本という(それでも)豊かな国では、大多数の国民が英語を話せる必要性はないと思っています。しかし、これから大人になっていく世代では、英語に馴染んでいる日本人を現在よりもはるかに多く排出していく必要があります。これは国力の維持にも関わる問題です。

私たちは、特に幼児~小学生という低年齢の児童に対しては、今後も次のような環境づくりを行っていきたいと思っています。
  • 外国人講師と定期的に触れることで、外国人に対して違和感を持たないようになる。
  • 単語(語彙)はパワーであり、幼少期にこそたくさんの「語彙習得」を図る。
  • 文字をあまり知らない時期にこそ、たくさんの英語を聞いて、「外国人の英語がわかる楽しさ」を味わえるようにする。
  • 履修した内容を使って「外国人に自分の英語が通じる楽しさ」を味わえるようにする。
  • 子ども自身の中に「英語を使ってコミュニケーションを図ってみたい」という気持ちを芽生えさせる。
  • 将来子ども自身が英語の必要性を感じ、自学しようとした時にスムーズに自学できるだけの基礎力をつくる。

また、私たちの英語教育にご賛同いただける民間教育機関のお手伝いをさせていただき、「使える英語教育」の
ネットワークを更に広げていきたいと思います。